
「言われたことしかやらない…」
「少し注意しただけで、ひどく落ち込んでしまう…」
「何を考えているのか、本音がまったく見えない…」
静岡県内で人を雇い、育てている経営者・人事の皆さん、若手社員に対してこんなお悩みはありませんか?「最近の若者は…」と頭を抱えているのは、あなただけではありません。
2026年6月5日、静岡商工会議所と静岡県よろず支援拠点の共催による経営スキルアップミニ講座「今どきのZ世代の人材育成とは」が開催されました。講師は、当拠点で人と組織づくりを得意とする井出 幸大(いで こうだい)コーディネーター。テーマは、副題のとおり「教え込む」から「個性を活かす」へのシフトです。
このレポートでは、若手とのすれ違いがなぜ起きるのか、そして明日から何を変えればいいのかを、当日のスライドに沿ってお届けします。
今回の講師・井出幸大コーディネーターについて
井出コーディネーターは、静岡県富士市の出身・在住。中小企業診断士でありキャリアコンサルタントでもあり、現在はまちづくり会社の経営に携わっています。鉄道(車掌)・遊園地運営から、静岡県教育委員会での学校教育、労働組合役員、人事制度の構築・運用支援まで——「ヒト」と「組織」に多方面から関わってきた、異色の経歴の持ち主です。
「すべての価値を生み出す源泉である『ヒト』の潜在能力は無限です」。そう語る井出コーディネーターだからこそ語れる、若手育成の“すれ違いの正体”がこのセミナーのテーマでした。
「最近の若者は…」の正体は、希望の持てなさ?

冒頭の3つのセリフは、どの職場でもよく聞かれる「すれ違い」です。では、今の若者は本当に“やる気がない”のでしょうか。
ここで井出コーディネーターが示したのが、日本財団による18歳の国際意識調査(2019年・経済産業省作成)のデータです。「自分で国や社会を変えられると思う」と答えた割合は
- 日本:18%
- 韓国:40%/アメリカ・中国:66%/イギリス:51%/ドイツ:46%
と、日本の若者だけが突出して低いのです。「将来の夢を持っている」も日本は60%(他国は82〜96%)。これは“やる気がない”というより、「自分が動いても変わらない」という無力感が背景にあることを示しています。
なぜすれ違う? 彼らが悪いのではなく「OS」が違う
井出コーディネーターの結論はこうです。「彼らが悪いのではなく、インストールされている『OS』が違う」。
私たち上の世代が受けてきた教育(古いOS)と、今の若者が受けてきた教育(新しいOS)は、まるで別物。スマートフォンに古いアプリを入れようとしても動かないのと同じで、「私たちの時代の当たり前」で接すると、エラー(すれ違い)が起きるのです。
「工場モデル」で育った私たち、「森モデル」で育った彼ら
| 項目/教育モデル | 昔の学校教育=工場モデル | 今の学校教育=森モデル(探究学習) |
|---|---|---|
| 学び方 | 暗記重視・ミスなく実行する | 自分で考え、対話する |
| 正解 | 常に「一つ」で、先生が持っている | 「複数」あり、自分たちで作る |
| 失敗 | 減点・悪いこと | プロセスのひとつ・学びの源泉 |
今の若者は、学校で「探究学習」——自分で問いを立て、対話しながら答えを作る学び——を経験してきた世代です。
探究学習で育った若者の「隠れた強み」
この違いは、弱みにも強みにも見えます。
- 弱みに見えること:「ただやれ」という“意味のない指示”には納得できず、足が止まってしまう。
- 本当の強み:しかし「目的と意味」さえあれば、大人が驚くほど自ら考え、行動し、新しいアイデアを生み出す。
つまり、彼らを動かすスイッチは「権力(命令)」ではなく「共感と納得」なのです。実際、若手の退職理由トップは「給与」ではなく「仕事にやりがい・意義を感じない」(リクルートマネジメントソリューションズ調査)。意味を感じられないことが、最も人を離れさせています。
やりがちな失敗——「指導」から入る1on1
良かれと思った面談が、逆効果になることがあります。井出コーディネーターが「現場で起きている悲劇」と呼ぶのが、失敗する1on1です。
上司「最近どう? 悩んでない? 実は俺の若い頃はさ…(武勇伝)。だからお前も、もっとこうすべきで…(アドバイス)」
部下(心の声)「また一方的な説教が始まった。早く終わらないかな…」
診断は「上司が話しすぎ症候群」。トーク比率が上司9:部下1になっていないでしょうか。
なぜ「指導」から入ると失敗するのか。対話に慣れた若者に、いきなり「ダメ出し」や「正解の押し付け」をすると、彼らは心のシャッターを下ろします。その結果、「どうせ言っても否定されるから、言われたことだけやろう」という“指示待ち人間”を、**上司自身が作り出してしまう**のです。冒頭の「言われたことしかやらない」は、実は育て方の結果かもしれません。
関係づくりから始める「成功のサイクル」
ではどうするか。井出コーディネーターが紹介したのが、組織が育つ「成功循環モデル」です。
- 関係の質 … 仲良くなる・安心できる(土壌を耕す)
- 思考の質 … 前向きに考える・アイデアが出る(栄養を吸い上げる)
- 行動の質 … 自発的に動く・挑戦する(芽を出し、枝を伸ばす)
- 結果の質 … 良い成果が実る
ポイントは順番です。多くの職場は、いきなり「結果(果実)」を求めてしまいます。しかし、すべては「関係(土壌づくり)」から始まります。土壌が痩せたまま実を求めても、木は育たないのです。
明日からの第一歩——「問いかけ」を変える
関係の質を上げる、最初の具体策。それは「問いかけ」を変えることです。「教える」のではなく、一緒に答えを「探究する」スタンスに切り替えます。
| ❌ NG:上司の押し付け | ⭕ OK:対話と共創 |
|---|---|
| 原因を詰める「なんでできないの?」 | 未来を共創する「どうしたらできそう?」 |
| 正解を押し付ける「こうするべきでしょ」 | 意見を引き出す「あなたはどう思う?」 |
| 感情を無視する「とにかく頑張れ」 | 寄り添う「今、何に困っている?」 |
右側の問いかけに変えるだけで、関係性は劇的に良くなります。まずは1on1で、武勇伝を封印し、この3つの問いを使ってみてください。
「Z世代」というラベルを剥がす
ここまで「Z世代」と語ってきましたが、井出コーディネーターは最後に大切な注意を促します。「『Z世代』というラベルを剥がしましょう**」。
「Z世代だから○○だ」という大きな主語での決めつけは、相手の心には届きません。同じ世代でも、一人ひとりが持つ「異なる強み、弱み、価値観」はまったく違います。解像度を上げ、目の前の“その人の個性”に向き合うこと——それが、本当の対話の入り口になります。
個性を理解し合う「共通言語」を持つ
実は今の若者は、「自分がどんな人間か(強み・弱み)」を客観的に知ること、つまり自己分析への関心が非常に高い世代です。
そこで有効なのが、MBTIなどの診断ツールを「どちらが優れているか」ではなく「どう違うか」を知るフラットな共通言語として使うこと。お互いの“タイプ”を客観的に知ることで、「性格が悪い」といった誤解が減り、無駄なコミュニケーションのすれ違いが激減します。「本音が見えない」を埋める、現実的な一手です。
個性を活かして強くなった——2つの実例

実例①:プロロードサイクルチーム「レバンテフジ静岡」
選手の「弱点を無理に直す」のではなく、一人ひとりの「強み・らしさ」を徹底的に可視化し、それを最大限に発揮できる役割を与えました。結果、指示待ちではなく選手が自発的に動き出し、お互いの強みを掛け合わせることで、ワクワクしながら勝てる組織へと変貌を遂げました。
実例②:小児歯科の職場づくり
人の健康を預かる現場だからこそ、スタッフ一人ひとりの個性を認め合い、絶対に否定しない「対話」が生まれる土壌(関係の質)を作りました。スタッフ間のコミュニケーションが円滑になり、その心理的安全性の高い雰囲気が、そのまま患者さん(子どもたち)への接し方にもつながり、クリニック全体の価値が向上したといいます。
どちらも、「弱みの矯正」ではなく「個性(らしさ)の発揮」と「関係の質」から始めて成果につなげた事例です。
まとめ:明日からのマネジメント、3つの約束
最後に、井出コーディネーターが示した「明日からできる3つの約束」をご紹介します。
- 「OS(探究学習)」の違いを理解し、尊重する … 彼らは考えていないのではなく、納得を求めている。
- 1on1では「教える」より「聞く・問いかける」 … 上司の武勇伝は封印し、主役を譲る。
- 弱みではなく「個性(らしさ)」にスポットライトを当てる … 森の多様な木々を育てるように。
「若者を古い型にはめるのではなく、彼らと一緒に新しい答えを探究していきましょう」——これが、すれ違いを乗り越える出発点です。
人材・組織のお悩み、一人で抱え込まずご相談ください
「若手が何を考えているかわからない」「育て方が合っているのか不安」——そう感じたら、静岡県よろず支援拠点をご活用ください。人と組織づくりに詳しいコーディネーターをはじめ、経験豊富な専門家が、何度でも無料であなたの経営相談に対応します。一人で抱え込まず、まずはお気軽にどうぞ。


