
「SNSはやっているけれど、何を投稿すればいいのか分からない」
「『いいね』は増えても、お店の売上にはつながっていない気がする」
「そもそも、何のためにやっているのか、だんだん分からなくなってきた」
静岡県内で日々奮闘されている経営者の皆さん、こんなお悩みはありませんか?
2026年6月4日、静岡商工会議所と静岡県よろず支援拠点の共催による経営スキルアップミニ講座「何を投稿すればいい?から始めるSNS集客」が開催されました。講師は、当拠点でSNS・マーケティングを専門とする増田 郁理(ますだ かおり)コーディネーター。ご自身も夫婦でフランス料理店を営みながら、開業当初の集客難をSNSの試行錯誤で乗り越えてきた 現場の実践者 です。
このレポートでは、当日のワークの流れを再現しながら、「何を投稿すればいいか分からない」を解消する考え方を、その場で書き込める形でお届けします。
今回の講師・増田郁理コーディネーターについて
増田コーディネーターは、滋賀県大津市の生まれ。17年前に縁もゆかりもない静岡市へ移り住み、現在はご主人と株式会社プラス・ブレストを経営しています。本業はJR清水駅から徒歩7分、26席の小さなフランス料理店「BonMasuda(ボンマスダ)」。コンセプトは「お箸で気軽に食べられるフランス料理店」です。
ウェブ解析士協会認定の「チーフSNSマネージャー」「ウェブ解析士」の資格を持ち、デジタル庁デジタル推進委員も務めるなど、SNSをビジネスに活かすことを教える立場でもあります。一方で、開業当初は「お客様が全く来ない」という時期を経験したからこそ、同じ悩みを抱える事業者の気持ちに寄り添える——それが増田コーディネーターの強みです。
なぜお店にお客様が来ないのか?理由の第1位は「存在を知られていない」こと

増田コーディネーターのお店も、始めた頃は本当にお客様が来ませんでした。
「美味しいものを出せば、良いサービスや良い作品を提供すれば、お客様はわんさか来る——そう思っていました。でも、一番最初にやらなければいけないことを忘れていたんです」
新規のお客様が来ない、その圧倒的第1位の理由。それは「そのお店の存在を知られていない」ことです。商品やサービスが嫌われているわけではありません。ただ単に、知られていないだけ。
これはSNSもまったく同じです。アカウントを開設すれば、自動的にフォロワーが増えるわけではありません。まず「自分のアカウントの存在を知ってもらう」ところから始まります。ここを飛ばして「何を投稿しよう」と悩んでも、空回りしてしまうのです。
そもそもSNSとは何か?正体は「人とのつながり」
投稿の中身を考える前に、SNSの“正体”を押さえておきましょう。
SNSは Social(社会的な)/Networking(つながり)/Service(サービス) の略。つまり「ネット上で社会的なつながりを提供するサービス」です。もっと簡単に言えば、「人」と「人」とのつながり。ここがすべての土台になります。
そもそもFacebookは、創業者が大学生のときに作った“人と人がつながる場”がスタートでした。SNSは元々「ビジネス活用」のために生まれたものではなく、人とのつながりの場だった——この前提を押さえておくと、後の投稿づくりがぐっと分かりやすくなります。
SNSとWebサイトは「メディアの種類」がちがう
| 種類 | 性質 | 向いている発信 |
|---|---|---|
| SNS | フロー型(流動・流れていく) | 「今」伝えたいこと・今見てほしいこと。双方向のやりとり |
| Webサイト(ホームページ) | ストック型(蓄積・残る) | いつ見ても正しい情報がある“最終確認”の場。一方向の発信 |
SNSは、Xを見ていれば分かるように、投稿がどんどん流れていきます。スピードが速く、「今」を発信し続けるメディアです。しかも双方向。
ここでつまずく方の多くは、SNSを“一方的な商品宣伝の場”として使ってしまいます。「うちの商品はこれです」と一方通行で発信し続けると、だんだん自分も苦しくなり、「発信するだけ」で疲れてしまうのです。
投稿に迷ったら「5W1H」で組み立てる

「何を投稿しよう」といきなり考えるのは難しいもの。そこで、中学校で習った 5W1H の出番です。
- Why(なぜ):何のために
- Who(誰に):ターゲット
- Where(どこで):どのSNSメディアを使うか
- What(何を):投稿内容
- When(いつ):どのタイミングで
- How(どのように):集客手段(=アカウントに気づいてもらう活動)
このうち、かなめとなる上の4つ(Why・Who・Where・What)を、順番に組み立てていきます。「How=気づいてもらう活動」も非常に大切ですが、ここではまず土台の4つに集中しましょう。
【Why=目的】何のためにSNSをやるのか
SNSの運用目的は、大きく5つに分けられます。
- 認知度の拡大 … 知らない人に知ってもらう
- ファンとの心理的なつながりを維持する … すでに来店・購入したお客様に「いつもそばにいます」と忘れられないようにする
- プロモーションの効果アップ … 広告を出すとき、フォロワーがいると効果が上がる
- 自社サイトへ誘導する … プロフィールのリンクから、ホームページやECサイトなど見てほしい場所へ送る
- 顧客の理解を深める … 自社がどう語られているかを知る(エゴサーチ)
5番目について少し補足します。たとえば「Yahoo!リアルタイム検索」で自社の名前を入れると、X上でどんな口コミが書かれているか、ポジティブかネガティブかの割合などが見えます。アカウントを持っていると、こうした“お客様の本音”をチェックしやすくなります。
ボンマスダの目的(サンプル)
増田コーディネーターのお店は、2番「ファンとの心理的なつながりを維持する」を目的にしています。お客様に喜んでいただける情報を発信し、リピーターさんに「またボンマスダ、面白そうなことやってるな」と思い出してもらう。選択肢に挙がるためのリマインドです。
「うちのような店は、お客様同士が『来週どこ行く?』と話したときに、3本の指に入らなかったら終わり。入っても『まあいいか』となれば売上になりません。だから、選択肢に挙がり、最後の背中の一押しになる発信を心がけています」
[ワーク1]あなたがSNSを使う「目的」を書き出してみましょう
上の5つから、自分の目的を選びます(複数選んでもOK)。そのうえで、自分の言葉で具体的に砕いてみてください。
□ 1. 認知度の拡大
□ 2. ファンとのつながり維持
□ 3. プロモーション効果UP
□ 4. 自社サイトへ誘導
□ 5. 顧客の理解を深める
私がSNSを使う目的は【 】。
具体的には【 】のために使う。
※この5つに当てはまらないこともあります。たとえば「求人・採用のため」という方も。その場合も「何のために」を自分の言葉で言語化することが大切です。
目的が達成できているか観察する数字(KPI)
目的を決めたら、それが達成できているかを見る数字(KPI)も知っておきましょう。「フォロワー数」や「いいね数」ばかり追うと苦しくなります。目的ごとに、見るべき数字は変わります。
| 目的 | 観察する数字(KPI) |
|---|---|
| 認知度の拡大 | フォロワー数・インプレッション(表示回数)・リーチ(届いた数) |
| ファンとのつながり | エンゲージメント率・コメント数・保存数 |
| プロモーション効果UP | リンクのクリック数 |
| 自社サイトへ誘導 | リンククリック数・サイト訪問数 |
| 顧客の理解を深める | 言及数・コメント数 |
ワンポイント:いま Instagram は、フォロワー数の多さよりも「フォローしている人がどれだけ反応・コメント・保存してくれたか」を重視する傾向にあります。数だけを追わなくて大丈夫です。
【Who=ターゲット】誰に届けるのか
目的の次は、ターゲット。より具体的にすると「ペルソナ(たった一人の理想のお客様像)」になります。
ボンマスダのペルソナ(サンプル)
Kさん(65歳・女性)
・清水区在住 ・会長夫人 ・時間とお金に余裕がある
・週に1回以上外食する ・趣味は料理で、習い事もしている
・お友達が複数いる ・お孫さんと毎日20時にお風呂に入っている
注目は最後の一文です。「20時にお風呂」ということは、20時にLINEやInstagramを送っても、すぐには見てもらえません。だから、落ち着いた夜9〜10時ごろに発信したほうが、Kさんのような人によく見てもらえる——ここまで具体的に描くと、発信のタイミングまで決まってくるのです。
実際の閲覧時間は、Instagramをプロアカウントに切り替えると見られる「インサイト」で確認できます。
余談:「何時に発信すればいいですか?」とよく聞かれます。東京など都会は通勤に電車を使うので通勤時間によく見られますが、静岡は車移動が多いため、夜や早朝に見られることが多い傾向があります。自分のマーケット(地域・お客様)を知らないと分からない部分です。
[ワーク2]あなたのSNSの「ターゲット」を書き出してみましょう
常連のお客様を思い浮かべる、過去の自分を思い出す、あるいは「どんな人とつながりたいか」から考えても構いません。
年齢/性別/居住地/職業/年収/家族構成/平日・休日の過ごし方/趣味/悩み …
私のターゲットは【 】。
※そのターゲットは、ワーク1で決めた「目的」に合っていますか?
特に「どんな悩みを持っているか」を考えると、「何を発信すればいいか」が自然と見えてきます。
【Where=メディア】どのSNSを使うか
ターゲットが決まったら、その人に届くメディアを選びます。主要SNSには、それぞれ性格があります。
| SNS | 主なメリット | 主なデメリット |
|---|---|---|
| X(旧Twitter) | 拡散力が高くリアルタイム性に優れる/ハッシュタグで話題に乗りやすい | 炎上リスク・信憑性の低い情報も流れる/投稿がすぐ流れ継続運用が必要 |
| 写真・動画で世界観を伝えやすい/気軽にライブができる・タブで検索される | 投稿作成に手間がかかる/フォロワー獲得に時間がかかる場合も | |
| 信頼性がありビジネス情報を届けやすい/長文・イベント告知に強い | 若年層の利用が減少/ビジネス投稿が届きにくい傾向 | |
| TikTok | フォロワーが少なくてもバズりやすい/拡散力が非常に高い | 動画編集スキルが必要/若年層中心で相性に差 |
セミナーでは、主要SNSの国内・世界の利用者数(出典:令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書/総務省情報通信政策研究所)も紹介されました。大切なのは「利用者数の多さ」ではなく、自分のターゲットがいるメディアを選ぶことです。
Instagramを選ぶ理由
- 幅広い年代の女性が利用しており、料理写真との相性も良いから
- リピーター様と双方向のコミュニケーションがとれるツールだから
- 一度でも来店したお客様をファン化させ、リピート率を上げるため
このように、「目的」と「ターゲット」に照らして、使うメディアと理由をはっきりさせます。
[ワーク3]使うSNSと、その理由を決めましょう
ワーク2で挙げたターゲットに届くのは、どのSNSですか?
私が使うSNSは【 】。理由は【 】だから。
※その選択は「目的」と照らし合わせて合っていますか?
【What=投稿内容】何を投稿するか
いよいよ「何を投稿すればいいか」の核心です。ここで増田コーディネーターから、意外な事実が共有されました。
ボンマスダのInstagramで、リーチ(見た人の数)が上位の投稿は——「料理の写真」ではないのです。
人気を集めたのは、お店や“人”の物語が伝わる投稿でした。たとえば、お店のSNSでつづられた、人間ドックの体験記のようなユーモラスな投稿。お客様は、料理の写真以上に、その奥にいる“人柄”や“物語”に反応するのです。
SNS投稿は、お客様との双方向コミュニケーションツール。やりとりが周りからも見え、お客様によるリアルな口コミ(UGC)も生まれます。そこへ丁寧に応える(アクティブサポートする)ことで、信頼が積み上がっていきます。
ボンマスダの投稿カテゴリは、たとえばこんな顔ぶれです。
- 子ども食堂の告知&報告(開催のきっかけ・想い・ゲスト紹介)
- 月替わりメニューのご案内(成り立ち・出来上がるまでの過程・想い)
- お客様の声
- メディア掲載の報告(御礼と、共感者を増やすブランディング)
料理そのものだけでなく、「なぜやっているのか」「どんな想いか」を語ることで、共感と協力が生まれていきます。
[ワーク4]投稿内容を3つ考えましょう
これまでのワーク(目的・ターゲット・メディア)を踏まえて——
- どんな内容を発信すれば、ターゲットは喜んでくれるか?
- その内容は「目的」と合っているか?
投稿アイデア①【 】
投稿アイデア②【 】
投稿アイデア③【 】
オンラインが活きるのは「オフラインを大切にするから」

最後に、増田コーディネーターが繰り返し強調したことがあります。
ボンマスダのLINE友だちは、6,002人(2026年4月9日現在)。1本のLINEで、おせちの予約が入ります。その数は、2011年の15個から、2022年には300個へ。これは一夜で起きた“バズ”ではなく、コツコツとお客様との信頼関係を構築してきた結果です。
「『オフ』ラインを大切にするから、『オン』ラインが活きるんです」
SNSは魔法の道具ではありません。目の前のお客様と向き合うこと——それが、商売の道理に立ち返るということ。SNSは、その積み重ねを“届ける”ための手段なのです。
まとめ:結局は「顧客と向き合うこと」の一点に尽きる
5W1Hで投稿を組み立てる——その出発点も到達点も、「お客様と向き合う」というシンプルな一点に尽きます。難しく考えすぎず、まずは小さく始めましょう。
増田コーディネーターが挙げた「今日からできる3つのこと」は、次のとおりです。
- SNSを使う「目的」を明確にする
- SNSでの「ターゲット」を明確にする
- アカウントの「プロフィール」を見直してみる
最初から完璧を目指す必要はありません。この3つから、一つずつ始めてみてください。
一人で悩まず、ぜひご相談ください
「SNSで何を投稿すればいいか分からない」「うちの場合、どのSNSをどう使えば…」——そう感じたら、静岡県よろず支援拠点をご活用ください。SNS・マーケティングを専門とするコーディネーターをはじめ、経験豊富な専門家が、何度でも無料であなたの経営相談に対応します。一人で抱え込まず、まずはお気軽にどうぞ。


