
補助金採択率アップにつながる自社分析入門
「補助金に挑戦したいけれど、何から書けばいいのか分からない…」
「自社の強みを書いてください、と言われても、うまく言葉にできない…」
「やる気はあるのに、計画書がなかなか採択につながらない…」
静岡県内で日々奮闘されている経営者の皆さん、こんなお悩みはありませんか?
実は、補助金の採択率を左右するのは、立派な言葉でも壮大な夢でもありません。「自分の会社のことを、客観的に分かっているかどうか」です。
先日、静岡商工会議所で開催した経営スキルアップミニ講座「補助金採択率アップにつながる自社分析入門」では、その土台となる自社分析の進め方を、ワークシートに書き込みながら学んでいただきました。本記事では、そのエッセンスをご紹介します。
今回のセミナーについて

講師は、静岡県よろず支援拠点コーディネーターで中小企業診断士の 太田優子 です。
旅行会社で営業・企画・広告宣伝から人材育成まで「中小企業のありとあらゆる仕事」を経験し、その後は旅館のコンサルティング会社で全国の旅館の商品・サービス改善や生産性向上支援に従事してきた、現場たたき上げのコーディネーターです(詳しいプロフィールはこちら)。
テーマには「補助金」とありますが、中心は「まず自社分析をしましょう」というメッセージ。補助金に限らず、お客様への発信や採用など、あらゆる場面で効いてくる「自社の強みを言葉にする力」を養う60分となりました。
なぜ「自社分析」が補助金で重要なのか
中小企業は「数を打っても当たらない」
中小企業は、人もお金も時間も限られています。「どんなお客様も受け入れます」「何でもできます」という総合デパート型の戦い方は、現実的にはできません。
だからこそ大切なのが、自分たちが本当に得意なものを見極め、それを必要としている人は誰なのかをすり合わせることです。これはお客様との「マッチング」そのものです。
セミナーでは、宿泊業の支援現場でこんな例を挙げました。3室・5室ほどの小さな宿で「家族連れもカップルも学生も外国人も、誰でも来てほしい」と考えると、結局「何の宿なのか」が分からなくなってしまう、と。
先日テレビ番組で紹介された関西の石けん店は、ホームページに堂々と「万人受けではありません」と掲げ、「合う人にはぴったり合います」と明言しています。合わない人は思い切って手放したことで、かえって“合う人”に深く支持され、ヒットにつながりました。選ぶこと=何かを捨てる勇気が、強みを際立たせるのです。
補助金の審査員も「自社理解」を見ている
補助金は、公的なお金を配分する制度です。審査する側は、「この事業者は、自分の特徴やお客様像を客観的に分かっているか」「描いた計画は本当に実現できるのか」「誰が聞いても納得できるか」を見ています。
「夢があります」「やる気は十分です」だけでは通りません。自社分析は、採択される計画書の“土台”。最近は補助金の申請書そのものに、後ほど紹介するSWOT分析の記入欄が設けられているケースも増えています。まずはここをしっかり固めましょう。
ステップ1:「誰に・何を・どのように」で現状を整理する

自社の商売を、次の3つの観点で書き出してみます。
- 誰に = お客様。たくさんのお客様の中で「いちばん喜んでくれている人」はどんな方ですか?
- 何を = その人が喜ぶために、どんな価値を提供していますか?(単なる商品名ではなく、盛り込んでいる“工夫”まで)
- どのように = それを届けるために、どんな形・手段でやっていますか?
たとえば居酒屋なら、こう深掘りします。
| 観点 | 記入例(居酒屋の場合) |
| 誰に | 近隣に住み、少し贅沢な夕食を楽しみたい50〜60代のご夫婦 |
| 何を | 駿河湾の鮮魚と静岡の地酒で味わう、非日常のくつろぎ |
| どのように | 個室の落ち着いた空間で、店主自ら市場で仕入れた日替わり献立を提供 |
「近所の人に魚を出している」ではなく、ここまで具体的に落とし込みます。特に「誰に(ターゲット)」は、補助金で新しい取り組みをする時の最重要ポイントです。
書いてみましょう
| 観点 | あなたのお店・会社の場合 |
| 誰に | |
| 何を | |
| どのように |
ステップ2:SWOT分析で「強み」と「チャンス」を見つける
次に、SWOT(スウォット)分析で自社を4つの面から見ていきます。
| プラスの面 | マイナスの面 | |
| 内部環境 (自分たち自身) | 強み (S) 選ばれる理由、褒められる点、独自の技術 | 弱み (W) 足りない設備・人手・スキル、効率の悪さ |
| 外部環境 (世の中の動き) | 機会 (O) 追い風、新しいニーズ、流行や環境の変化 | 脅威 (T) 物価高、競合の出現、客層の減少、法改正 |
ポイントは、強みと弱みは「自分たち自身(内部)」、機会と脅威は「自分たちではどうにもできない外部環境」と分けて考えることです。
「強み」は遠慮なく、たくさん書き出す
強みは、自分ではなかなか思い浮かばないものです。でも、ここで遠慮は禁物。採用面接で「私には何の取り柄もありません」と言う人を採りたいとは思わないのと同じで、補助金でも「いいところがいっぱい出てくる会社」のほうが「いろんな可能性がある」と評価されます。「このくらいでは自慢にならない」と思わず、まずは数を出しましょう。
「機会」は、世の中にアンテナを張る
機会=時代の変化は、ニュースやお客様の声から拾えます。自分たちの仕事を必要とする人が、いまどんな環境に置かれているか。アンテナを張っておくほど、チャンスを掴みやすくなります。
書いてみましょう
| 強み (S) | 機会 (O) |
| 弱み (W) | 脅威 (T) |
ステップ3:「強み×機会」を掛け算して、独自の価値をつくる
4つが見えたら、次が肝心です。中小企業がとるべき基本戦略は、弱みを無理に潰すことではなく、強みと機会を掛け算すること。
設備が足りなくても、お金がなければすぐには買えません。人を増やせば人件費が上がります。脅威(物価高など)も自力では止められません。だからこそ、「強みを生かす」「機会に乗る」ほうが圧倒的に現実的なのです。
マーケティングでは、他社にはない自社ならではの価値をUSP(独自の価値)と呼びます。これは、まさに「強み × 機会」から生まれます。
例:地元の果物を仕入れられる、お菓子工房の場合
- 強み:地元農家から果物を直接仕入れでき、おいしい焼き菓子をつくる技術がある
- 機会:地産地消・食の安全への関心が高まっている
- 掛け算(USP):地産地消・無添加にこだわったお菓子を開発 ➔ 関心の高い層が新たなお客様に!
強みを持っているのに生かしきれていない事業者は驚くほど多いとのこと。実際に支援したお菓子店も、素材に強いこだわりがあるのに発信しておらず、「もっと大々的にアピールしましょう」と背中を押したそうです。あなたの「強み × 機会」を掛け算したら、何が生まれるでしょうか。
ステップ4:「1分間ストーリー」にまとめる
語りたいことは山ほどあっても、補助金の申請書は文字数が限られています。1分で伝わる形に凝縮しましょう。基本の型はこうです。
当社は ①◯◯という強み を生かし、②◯◯というチャンス(流行・関心の高まり) を掴むために、今回 ③◯◯(新しい取り組み) に取り組みます。これができれば、④◯◯という未来 が待っています。
先ほどのお菓子店なら、こうなります。
当店は、地元農家から直接仕入れる新鮮な果物の仕入れ力と、国産素材へのこだわりという【強み】を生かし、健康志向や地産地消への関心が高まっている30〜40代の女性のニーズ【チャンス】を掴むために、最新の冷凍包装設備を導入し、地元産フルーツをふんだんに使った無添加の旬のフルーツタルトを開発・販売します【取り組み】。これができれば、旬の時期以外でも高品質なスイーツを提供でき、地元の農業振興と当社の売上20%アップにつながります【未来】。
うまく書けている理由は次の4つです。
- 強みが具体的(地元農家と直接・新鮮)
- ターゲットが具体的(30〜40代女性)
- 何を導入するか明確(冷凍包装設備 = 補助金で買いたいもの)
- 売上につながる筋道に説得力がある
さらに、最近の補助金は地域経済への貢献を重視するため、「地元の農業振興」など地域とのつながりを入れると評価されやすくなります。
採択率を上げる4つのチェックポイント

最後に、計画書づくりで意識したい点をまとめます。
- 一貫性:自社分析と、取り組む内容がつながっているか(強みを伸ばすための取り組みになっているか)
- 具体性:何を導入し、何に取り組み、何を狙うのかが明確か
- 相乗効果(シナジー):今の取り組みや過去の経験が、新しい挑戦に生きると伝わるか
- 目的との一致:補助金ごとに目的は異なる(新しい挑戦の支援か、省力化・働く環境の改善か等)。主題に合わせて書き方を工夫する
生成AIは「自己分析の“後”」に使う
文章づくりに生成AIを使う方が増えました。ただし、白紙の状態で「私の会社の強みは?」と聞いても、正確な答えは返ってきません。今日のような自己分析は、まず自分たちで行うことが出発点です。
うまく見つからないときは、従業員に聞く、お客様の声(口コミ・アンケート)に耳を傾けるのも有効。そうして整理した内容を、「いま話したことを1分で」「100文字に」とまとめ直すのは、生成AIの得意分野です。
順番は、自己分析が先、AIは後。これを覚えておいてください。
まとめ
補助金の採択も、お客様への発信も、突き詰めれば「自社の強みを、相手に伝わる言葉にできるか」の一点に集約されます。
最初から完璧な計画書を目指す必要はありません。まずは「誰に・何を・どのように」を書き出し、SWOTで強みとチャンスを見つけ、「強み × 機会」で1分間ストーリーを組み立てる。この順番でたどれば、あなたの会社の“選ばれる理由”は、必ず言葉になります。
一人で悩まず、ぜひご相談ください
「自社の強みをもっと深掘りしたい」「うちの場合、どの補助金が合うのか相談したい」──そう感じたら、ぜひ静岡県よろず支援拠点をご活用ください。経験豊富な専門コーディネーターが、何度でも無料であなたの経営相談に対応します。
一人で抱え込まず、まずはお気軽にお問い合わせください。


