「自分の事業を、もっと多くの人に知ってほしい」

「新しいサービスを始めたいけど、資金が…」

そんな熱い想いを抱える小規模事業者の皆さん。その夢を実現するため、国が力強く後押ししてくれる制度があるのをご存知ですか?

それが「小規模事業者持続化補助金」です。

先日、静岡県よろず支援拠点が主催する、この補助金の申請支援セミナーに参加してきました。講師を務めたのは、自身も中小企業の経営経験を持つ中小企業診断士の竹澤和宏コーディネーター。

「前回採択率は全国で約4割」「一番大事なのは、これ(公募要領)に則ること」――。

そんなリアルな言葉が飛び交うセミナーは、まさに目からウロコ。今回は、そのセミナーで語られた「採択率をグッと引き上げる事業計画書作成の秘訣」を、皆さんに余すことなくお伝えします! これから申請を考えている方も、事業計画書づくりに悩んでいる方も、必見です。


そもそも「小規模事業者持続化補助金」って何?

本題に入る前に、簡単におさらいです。この補助金は、一言でいえば「小規模事業者が行う、新しいお客さんを掴むための取り組み(販路開拓)や、仕事の効率を上げる取り組み(業務効率化)を応援しますよ」という制度。

  • 補助上限:通常枠で50万円(特定の条件を満たすと最大200万円)
  • 補助率:かかった経費の2/3
  • 対象経費の例
    • 新しい機械の購入費
    • 宣伝用のチラシ作成・配布費、Web広告費
    • 新商品の開発費
    • 店舗改装の費用
    • 展示会への出展費用 など

「こんなことにも使えるんだ!」と思った方も多いのではないでしょうか。あなたの「やりたいこと」を実現するための、力強い味方になってくれる制度です。


【最重要】採択率を上げるための3つの鉄則

さて、ここからが本番です。全国から多くの申請が集まるこの補助金。どうすれば「採択される計画書」になるのでしょうか。竹澤コーディネーターが繰り返し強調していた、3つの鉄則をご紹介します。

鉄則1:公募要領は“バイブル”だと思え!

分厚くて読むのが大変そうな「公募要領」。つい後回しにしたくなりますが、竹澤コーディネーターは「全てのことが書いてある。公募要領に戻ることが一番採択率が上がる」と断言します。

審査員は、この公募要領に書かれている審査の観点(31ページに記載!)に沿って、何百、何千という申請書をチェックします。つまり、公募要領は「攻略本」そのもの。書類の抜け漏れがないか、ファイル名は指示通りか、といった基本的なことができていないと、土俵にすら上がれない可能性があります。

テクニックに走る前に、まずはこのバイブルを熟読し、ルールを完全に理解することが、重要です。

鉄則2:審査員を唸らせる「ストーリー」を紡げ!

これが最も重要なポイントです。申請書は、単なる項目の穴埋めではありません。あなたの事業への「想い」を伝える物語であるべきです。

竹澤コーディネーターは、A4の紙に書き出す思考整理法を例に挙げました。

  1. 【現状】 なぜ今、この取り組みが必要なのか?(例:最近売上が落ちてきた、お客様から新しい要望が…)
  2. 【課題】 事業が抱える具体的な問題点は何か?
  3. 【自社のみ】 他社には真似できない、あなたの武器は?(独自の技術、温かい接客など)
  4. 【未来のビジョン】 この補助金を使って、どんな会社になりたいか?
  5. 【取り組み】 その未来を実現するために、補助金で「何」をするのか?
  6. 【成果】 取り組みによって、売上や顧客数がどう変わるか?(具体的な数字で!)
  7. 【波及効果】 あなたの事業の成長が、地域にどんな良い影響を与えるか?

これらの要素が、「こんな課題がある→だから、うちの強みを活かしてこんな挑戦がしたい→そのために補助金が必要で、成功すればこんな未来が待っている」という一本の線で繋がっていることが理想です。

例えば、こんなストーリーです。

長年、地域でお弁当屋を営んできたが、最近は人手不足が深刻。お客様からは「もっと配達エリアを広げてほしい」という声も多い【現状と課題】。そこで、補助金で持ち運びできる高性能な冷蔵庫を購入し【取り組み】、これまで届けられなかったエリアへの配達サービスを開始。配達エリアを〇〇まで拡大し、売上を15%アップさせ、地域のお年寄りの食生活を支えたい【成果とビジョン】。

どうでしょう?ただ「冷蔵庫が欲しい」と書くより、ずっと応援したくなりませんか? あなたの事業の物語を、熱意を持って語ってください。

鉄則3:「自ら作成した」という熱量を込めろ!

「ホームページにあるような例文を参考にせず、皆さんの思いを申請書に込めてください」

という言葉も印象的でした。

テンプレートをなぞっただけの計画書は、すぐに見抜かれてしまいます。審査員が見たいのは、経営者自身が真剣に悩み、考え、未来を切り拓こうとする「生の声」です。多少不器用でも、自分の言葉で、自分の事業のストーリーを語ることが、何よりの説得力になります。


知らないと損!申請前のチェックリスト

計画書の中身と合わせて、手続き上の注意点も押さえておきましょう。

  • 申請は電子申請のみ!:郵送は受け付けていません。国のシステム「Jグランツ」を使います。
  • 「GビズIDプライム」は今すぐ取得!:電子申請に必要なIDです。取得に2〜3週間かかることもあるので、計画書を作り始める前に、まず申請を済ませておきましょう。
  • パソコン・スマホは対象外:仕事で使うものでも、「汎用性がある(他の目的にも使えてしまう)」ものは補助対象外です。対象経費か不安な場合は、必ず公募要領を確認するか、相談窓口に問い合わせましょう。
  • 発注は「交付決定」の後!:採択されて、「補助金を出しますよ」という「交付決定通知」が届く前に購入・契約したものは、補助の対象になりません。フライングは厳禁です。

困ったときはプロを頼ろう!「よろず支援拠点」という駆け込み寺

ここまで読んで、「自分一人でできるか不安…」と感じた方もいるかもしれません。

そんな時に頼りになるのが、今回セミナーを主催した「静岡県よろず支援拠点」です。よろず支援拠点は、国が全国に設置している無料の経営相談所で、中小企業診断士、弁護士、ITの専門家など、様々なプロフェッショナルが在籍しています。

「事業計画の壁打ち相手になってほしい」

「この経費は対象になる?」

「そもそも、うちの課題って何だろう?」

どんな些細な相談でも、親身になってサポートしてくれます。一人で抱え込まず、専門家の力を借りることも、採択への近道です。


まとめ:補助金申請は、あなたの事業を見つめ直す最高のチャンス

今回のセミナーで一貫して感じたのは、小規模事業者持続化補助金の申請プロセスは、単なる事務作業ではないということです。

自社の現状と向き合い、強みを再確認し、未来への羅針盤を描く。

このプロセスそのものが、あなたの事業を成長させるための、またとない機会になります。そして、その中で生まれた「熱い想い」こそが、審査員の心を動かす最大の武器になるのです。

さあ、まずは「GビズID」の取得から始めてみませんか? あなたの情熱的なストーリーが、事業を未来へと動かすことを応援しています!