「うちのパートさん、社会保険に入れないといけなくなるの?」

「最低賃金が上がると、経営が厳しくなる…」

そんなお悩みを抱える経営者様、人事担当者様は少なくないのではないでしょうか。

社会保険のルールや最低賃金は、今まさに大きな変化の時を迎えています。この変化は、知らずにいると人件費の急増や人材の離職といった経営リスクに直結しかねません。

今回のセミナーレポートでは、中小企業診断士・社会保険労務士の稲守コーディネーターが解説した「激動の時代を乗り切るための経営戦略」の要点を、ギュッと凝縮してお届けします。変化をピンチではなくチャンスに変えるヒントが満載です。


経営者が押さえるべき、今後の3つの大きな変化と対策

セミナーでは、今後の経営環境に大きな影響を与える変化として、特に重要な3つのポイントが挙げられました。ただ制度を解説するだけでなく、「だから、今何をすべきか」という具体的なアクションプランに繋がることが重要です。

ポイント1:パート・アルバイトの社会保険適用がさらに拡大する!

これまで従業員101人以上の企業が対象だった短時間労働者への社会保険適用が、2024年10月からは「従業員51人以上」の企業にも拡大されます。今後、この人数要件はさらに緩和・撤廃される可能性が高いと専門家は見ています。

  • 【なぜ重要?】 対象となる従業員さんが加入すると、会社は保険料の半分を負担することになります。これは、対象者一人あたり年間約17万円の人件費増加(月給9万8000円の場合)に相当し、経営へのインパクトは決して小さくありません。また、従業員さん側も手取りが減るため、働き方の見直しや離職に繋がる可能性も考慮すべきです。
  • 【今すぐやるべきこと】 まずは、自社のパート・アルバイト従業員の労働時間と月収を正確に把握しましょう。「週20時間以上」「月額賃金8.8万円以上」などの加入要件に該当しそうな従業員が何人いるかを確認し、人件費がどのくらい増加するのかをシミュレーションしておくことが、最初の重要な一歩です。

ポイント2:最低賃金が「年7%以上」のペースで上昇する!

政府は全国加重平均で「最低賃金1500円」を目指す方針を前倒しで進めています。目標達成のためには今後数年間、毎年7%以上という、これまでにないペースでの引き上げが必要になると試算されています。

  • 【なぜ重要?】 パート・アルバイトの労働力に頼っているビジネスモデルは、人件費の高騰によって収益構造が根本から揺らぐ恐れがあります。「人件費が上がったので、取引先に値上げをお願いします」というのは、簡単には通りません。
  • 【今すぐやるべきこと】 「価格転嫁できる仕組み」を今から作ることが不可欠です。そのためには、まず製品やサービスごとの正確な原価計算を行い、どこに利益があり、どこが厳しいのかを「見える化」することが大切です。その上で、日頃から取引先とコストについて話す機会を設け、信頼関係を築きながら交渉できる土壌を作っておきましょう。

ポイント3:「年金70歳支給」時代を見据えた職場環境を作る!

すぐの法改正ではありませんが、将来的には年金の支給開始年齢が70歳に引き上げられる可能性が濃厚です。それに伴い、企業には70歳までの雇用確保義務が求められるようになります。

  • 【なぜ重要?】 体力が必要な業務や、旧来のやり方に依存した職場では、高年齢の従業員が生産性を維持して働き続けることは困難です。60歳を過ぎたら給与を大幅に下げる、といった従来の賃金体系も見直しを迫られます。
  • 【今すぐやるべきこと】 高年齢者でも無理なく、そして生産性を落とさずに働ける環境へのアップデートが必要です。例えば、重いものを運ぶ作業にパワーアシストスーツを導入したり、ITツールを活用して業務を効率化したりと、年齢や体力に依存しない仕組みづくりを検討しましょう。これは、人手不足が深刻化する中で、多様な人材が活躍できる強い会社を作ることにも繋がります。

まとめ

社会保険の適用拡大、最低賃金の上昇、そして高齢化への対応。これらの変化は、一つひとつが経営に大きな影響を与える重要なテーマです。

セミナーで稲守コーディネーターが引用したダーウィンの言葉「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である」という言葉が、今の時代を乗り切るための核心を突いています。

ぜひこの機会に、自社のビジネスモデルや事業計画を一度見直してみてはいかがでしょうか。

静岡県よろず支援拠点では、専門のコーディネーターが無料であなたの経営相談に対応します。一人で悩まず、ぜひお気軽にご相談ください。